令和になっても僕らは、ノベルゲーを求める。 2020年新作から想像する未来

2020年3月18日

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時は令和、美少女ゲーム業界はどこへ向かっていくのだろうか。

『Fate』『うたわれるもの』『グリザイアの果実』『Air』。
今もなお人気を博するこれらのタイトルは、美少女ゲーム……なおかつ18禁版が原作である。

そんな美少女ゲーム業界は黄金期──2000年前後から市場はど加速度的に大きくなり続け、次第に「エロ」でなく「物語」「イラスト」「音楽」と総合的に評価されるようになってきた。

魅力的キャラクターの数々はユーザーの心を掴み、物語に合わせて流れるBGMは、時に胸を熱くさせ、時には涙を誘う。「紙芝居ゲー」と揶揄されながらも、読書とは異なる、濃厚な体験を届けてくれた。

しかし、黄金期からおよそ20年。市場は大きく変わった。

ライトノベルの発展。
スマホゲームの普及。
アニメ脚本に有名シナリオライターの採用。

代替となるコンテンツはより手軽に、よりお手頃な価格で、より高いクオリティの作品が次々と生み出されていた。

2020年現在、美少女ゲームメーカーは、岐路に立たされている。

そんな中でも、最近印象的な動きを見せたメーカーをピックアップしていきながら、今後の展開について考えていきたい。

『TrymenT』……「美少女ゲーム」を「ビジュアルノベル」に

『TrymenT〜今を変えたいと 願うあなたへ〜』は、2016年発売の『Re:LieF~親愛なるあなたへ~』を基にしたゲームだ。社会からドロップアウトした人たちが、擬似学園生活を送りながら、もう一度、社会との向き合い方を考えていく。

現代社会にも刺さるテーマと、SF要素が入り混じった挑戦的作品であり、「萌えゲーアワード」ではシナリオ部門で金賞を取っている。ディスク版に関してはプレミアが付くほどだ。

『Re:LieF』自体はいわゆるエロゲーであり、『TrymenT』の製作初期の方では、リメイク版+追加エピソード、のような路線だと告知されていた。

しかし、路線は変わり、ルートでヒロインを攻略するゲームではなく、ノベル要素を主体とした「ビジュアルノベル」として売り出すことを決めた。

原因は多岐にわたり一概に言えるものではありませんが、大きな問題として、あらゆる側面で市場価値が落ちていることが挙げられます。

特に、この市場で活躍することへの憧れや期待を抱きづらく、目指す人たちが減ってきていることが、私たちはとても大きな問題だと捉えております。

私たちはせめて、様々なアーティストが広い可能性をもって集えるこのコンテンツ形態を生かし、残していきたいと考え、数ある原因のうち、特に現状において大きな問題だと考えられるものを可能な限りクリアし、自分たちにできる得意なやり方で臨みました。

その結果、行きついた方針が“ビジュアルノベル”としてのコンテンツ展開でした。

TrymenT活動方針について
https://re-tryment.com/activity-policy/

この判断は、間違いではないのだろう。


全年齢版になっているのはもちろん、体験版時点で、PC版に加え、AndroidやIOSに対応している。非常に手に取りやすくなった。
元々が社会生活を送る人の多くに刺さるテーマだったのを踏まえ、間口が広がり、より多くの人に触れてもらえる商品の形になったと思う。

実際、体験版をプレイすると、読み応えが変わっているのが分かる。

地の文が三人称になっていたり、『Re:LieF』を主要キャラ含めた複数の視点で進行していく。

ルート分けされ、1キャラずつピントを当てた物語から、並行して話が動く群像劇のような話になった。

グラフィックや音楽がとにかく美麗で淡々とした語りになったことも相まって、確かにサウンドノベルの印象に近い。
『Re:LieF』の味わいは残しつつ、似て非なるゲームに生まれ変わった、と言っていいだろう。

2月20日、前編にあたる「AlphA編」が発売予定。原作発売からおよそ4年をかけて生まれ変わった作品は、果たしてどのような読後感を与えてくれるのだろうか。

『マルコと銀河竜』……今までのADVの常識を覆す挑戦作


今後のADVを語る上で、発売前から話題を読んだこの作品も避けては通れないだろう。

『マルコと銀河竜』は『ノラと皇女と野良猫ハート』のスタッフが手掛ける、新作ADVだ。
前述の『TrymenT』同様、この2020年に、全年齢版新作として切り込んできた。


何がヤバいのか、どんな話なのかは、公式実況者の体験版動画を見てもらうと分かりやすい。

最初の5分だけでもいい。5分だけでも、今までのノベルゲーと比べ明らかに異質なつくりだと分かる。

圧倒的CGの枚数、さらっと挿入されるカートゥーンなアニメーション。「紙芝居ゲー」の領域を超え、TVアニメを見ている感覚に迫りつつある。


公式も、それを最大の特徴として堂々と売り出している。

一般的フルプライスのADVゲームだとイベントCGは多くて100枚行くか行かないかだが……

https://twitter.com/tokyotoon/status/1223196078817738752?s=20

文字通り、桁違いである。1000枚って。

テキストを進める度にイラストがするする切り替わっていく気持ちよさ、コメディチックな話のテンポの良さも相まって、ノベルゲーに触れてこなかった人もストレスなく楽しめるつくりだと言える。

また、言語は英語・中文に対応している。カートゥーンなアニメ、圧倒的読みやすさの作りは、確かにグローバルな展開をする価値があるだろう。

単なる18禁シーンを取り除いた新作ゲーム、というわけではなく、1シーン毎の密度を深めることで、誰もが目を惹くノベルゲーの新境地に挑戦したのが『マルコと銀河龍』だろう。
発売は2月28日。本編はどんな風に魅せてくれるのか、非常に楽しみだ。

「ANIPLEX.EXE」……アニプレックス×美少女ゲームメーカーの新ブランド

ATRI ノベルゲー アニプレックス

『スチームパンクシリーズ』のライアーソフト。
『グリザイアシリーズ』のフロントウイング×『サクラノ詩』の枕。

有名な美少女ゲームメーカーによって製作されるゲームを、アニプレックスの新ブランド「ANIPLEX.EXE」としてリリースする、新プロジェクト。

これまで、ノベルゲーのアニメ化は幾度もあったが、アニメ会社の方からノベルゲー製作を企画するのは初めてじゃないだろうか。

現時点では公開情報が少なく、体験版もまだなので多くを語ることはできない。だが、大手アニメーション会社と美少女ゲーム会社が手を取り合って製作をする、というだけで「業界の何かが動き出そうとしている」と感じるには十分だろう。

発表された2作はDL版のみで、ディスク版はない。これも、美少女ゲームの課題であった「値段の高さ」「割れ対策」を解消するためなのかもしれない。

そして、何よりも注目したのは、このプロジェクトのキャッチコピー。

「ノベルゲームだから、おもしろい。」

縮小するノベルゲー市場を再奮させるような、力強い主張だ。
万全のスタッフで臨まれる、渾身のノベルゲーに期待したい。

まとめ……それでも私は、ノベルゲーが好きだ


上記から分かるように、昨今の美少女ゲーム業界は全年齢版──かつ選択肢要素を減らした「ノベルゲーム」へと着実に舵を取りつつある。

Keyが『Rewrite』を製作する時に全年齢版のみと告知され、当時は話題になった2011年。今後は「全年齢版で売るのが普通」「攻略要素よりノベル性重視」の時代へと流れていくのだろうか。

だが、どんな形になっても、私はやはりこの業界を追い続けたい。

ここまで読んでくれた読者は知っているのではないだろうか。
時間の使い方、値段の大小では比較できないような体験が、美少女ゲームにあったことを。

実際、私は、「物語」を、そして「ゲーム」を楽しんでいた。

『Fate/stay night』では、バッドエンドをくぐり抜けてトゥルーエンドへ向かう、選択肢のスリルがたまらなかった。
『CLANNAD』では、パパの胸の中で泣く汐を見て、ずっと視界が霞んだままだった。
『WHITE ALBUM2』では、胃が痛くてテキストを進める手が幾度も止まった。
熱中しすぎて、春休みが丸ごと潰れたこともある。


周りから見たら馬鹿らしい、ゲームに費やした時間の結晶が、今でもかけがえのない宝物だ。

ノベルゲーへと形が変わっても、この体験は変わらず味わえるはずだ。
なら、出来る限り手に取り、「いやいや、今でもあの業界はめちゃくちゃ面白いもの作ってるよ」と語るのが、ユーザーとして出来ることだと考えている。

だから私は、きっと令和になっても、液晶に映る世界に没入し続ける。

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