『WHITE ALBUM2』はなぜ重暗いテーマなのに根強い人気があるのか

2019年11月4日

スポンサーリンク

WHITE ALBUM2 感想

「冴えカノを見た人は、WHITE ALBUM2も見てほしい!」

前回の冴えカノ記事でも書いたが、熱心な丸戸ファンの中で、度々目にする言葉だ。

『WHITE ALBUM2』とは、Leaf制作の、「彼女がいる中での恋愛」……浮気・三角関係をテーマとした美少女ゲーム作品、その続編。
Leafの人気作であり、時代の存在でもある純愛作品『To Heart』のアンチテーゼとして生み出された。

『To Heart』が王道なら、『WHITE ALBUM(2)』は邪道と言っていい。

では、なぜ重暗いテーマの作品が、今なお強く推されているのだろうか?

それは、登場する人物がみんな優しく、深い絆で繋がっている。という前提条件があるからだ。

傷つけたくないからこそ、悩みは複雑になり、浮気の一言では片付けられない、細やかな感情の動きが生まれていく。

当時、筆者が好奇心で手に取った結果、気付けば長期休みを投げ捨て、全ルートを走りきっていたくらいには、惹きつけられる力を持っていたのだ。

そんな、長年経っても感想を語り継がれている理由について、未プレイの人向けに、その特色を何点かに絞って解説していきたい。

※当記事は作品のネタバレを含んでおります。未プレイの方向けに直接的表現は避けておりますが、読む際はご注意ください

物語の概要、あらすじ

軽音楽同好会に所属する北原春希。学園祭での発表を目の前にする中、同好会は解散の危機に陥っていた。
ボーカルとの軋轢、反発する形で抜けていくメンバー。気づけば、春希だけがひとり取り残されていた。
どうにか打開策を考えつつ、放課後ギターを弾いていると、外から不思議な音色が流れてきた。

春希のギターに合わせたピアノの旋律。
二つの音色に乗せて、屋上から響く歌声。

その音の主は、不良ピアニストの冬馬かずさ、学園一の人気者、小木曽雪菜だった。
春希は彼女たちを説得し、ボーカル・キーボードとして一緒に参加することになる。
バンド結成から本番までの期間はわずか。ギリギリのスケジュールの中、少しずつ音は良くなり、三人の絆はどんどん深まっていった。

いつしか、三人の胸の奥底で、友情とは別の感情が生まれつつあることを、誰も口にしないまま……

以上のあらすじが、高校生編の「introductory chapter」(序章)。その後、三人の関係に亀裂が入った先の大学生編、「closing chapter」(終章)……と続いていく。

世界観は前作「1」と共有しているが、直接的繋がりはないので、前作を知らなくても楽しめるようになっている。

キャラ概要

・小木曽雪菜

WHITE ALBUM2 感想 雪菜

学園のミスコン優勝候補、ヒトカラの歌姫。

温和な性格で、アイドルのような人気があるが、ここぞというところでは譲らない芯の強さを持っている。

「introductory chapter」中盤で、雪菜は春希に告白し、恋人関係となる。

このシーンがターニングポイントとなり、物語が大きく動いていく。

・冬馬かずさ

WHITE ALBUM2 感想 冬馬かずさ

居眠りの常習犯だが、バンドの作曲を自分で手がけるほどの天才ピアニスト。

心の拠り所が無く、一匹狼の不良生徒として過ごしていたところに、春希のお節介に巻き込まれて、絆されていく。

・北原春希

主人公。軽音楽同好会のギター担当。

学園祭のスタッフでもないのに準備を手伝ったり、一人からバンド再結成に奮闘するなど、生真面目で委員長気質。

そんな、目の前の問題を放棄できない性格が春希の長所であり、しかし三角関係のツボにはまっていく一因に……

・和泉千秋 和泉千秋 風岡麻理(サブヒロイン)

「closing chapter」では、雪菜とかずさ以外のサブヒロインも登場する。彼女たちの立場は様々だが、「雪菜/かずさ を選ぶ、以外の第三の選択肢」として関わってくるのがポイント。

優しい世界を裏切ること

『WHITE ALBUM2』を語る上でまず前提となるのは、三点。

①敵意を持って主人公たちの関係を破壊する──悪者のような立ち位置の人物が存在しない
②例え、ヒロインが恋愛感情に気づいたとしても、ギリギリの瞬間まで「恋」と定義しない
③雪菜以外のヒロインを選ぶということは、一度恋人関係になった雪菜を裏切る

ということ。

まずは①について。

この物語に登場する人物たちは──雪菜やかずさ、春希だけでなく、彼女らを取り巻く人たちも、温かさに満ちた人で繋がっている。

雪菜は、春希の恋心とは別に、ずっと三人で仲良く一緒に居続けることを願っている。

かずさは、自分の恋心に気付きつつも、雪菜と春希の仲を優先し、自ら身を引く選択をする。

親友の武也は、春希の気持ちが揺れていることに気付きつつも、何も言わず、中立的な立場から暖かい言葉をかけてくれる。

このように、彼女らの望む未来は違うかもしれないが、誰もが、大切な人が一番傷つかない結末を願っていることは同じだ。

けれど、春希が 雪菜/かずさ を選ぶということは、一方を裏切ることに他ならない。

その気持ちを「恋」と名付けることの危うさ

続いて、②について

春希、雪菜、かずさ。この三人の関係は、非常に危ういバランスの上に成り立っていた。

軽音楽部の仲間として深めた「友情」は、誰か一人でも「恋愛」に変わった途端、全てがひっくり返ってしまう。

概要で述べた通り、「introductory chapter」で雪菜は春希に告白し、春希もそれを受け入れる。

その知らせを聞いたかずさは、春希に抱いていた恋愛感情を押し殺し、同好会の仲間として以前と変わらない接し方に徹する。

どこか無理のあるかずさの振る舞いだったが、春希も、雪菜も飲み込んだ。そして、

なぜなら、彼らにとって、同好会として、「三人」で過ごした時間は、失いたくない、かけがえのないものだったからだ。

WHITE ALBUM2 感想 かずさWHITE ALBUM2 感想 かずさ

短編など、後に語られることになるが、かずさの恋心自体は、軽音楽部に入る前から生まれていた。

しかし、やがて恋心を吐露する最後の瞬間まで、彼女は自らの思いを「恋」と定義せず、「友情」であろうとした。

なぜなら、「友達」でないと、同好会の仲間として、「三人」で居られなくなるからだ。

では、エゴを優先し「恋」と名付けた瞬間、どうなるか。

「三人」で居られなくなるどころか、春希と雪菜の関係すら破壊してしまう。それが解っているからこそ、かずさは自らの感情を押し殺し続けたのだ。

そうやって、自分を無理矢理を抑え続けた結果、かずさの心は見えない所で傷ついていき、諦めきれない恋心は、コントロールが効かなくなるほど膨れ上がっていく。

また、この点については、サブヒロインにおいても同様のことが言える。

例えば、春希の後輩・杉浦小春。

小春の親友が、春希に酷い振られ方をしたと聞き、その怒りから春希に介入することとなる。

初めは敵対心から始まった関係だが、春希が振った理由、その心情に首を突っ込んでいく中で、雪菜への強い思いが残っていることを、小春は知っていく。

真面目でお節介な気質である小春は徐々に、雪菜との関係を支えようとする気持ちも芽生えていき、仲直りのお膳立てをするように。

そうして、春希と二人三脚で、何とか雪菜との繋がりを取り戻そうとするのが小春ルートなわけだが、ここで問題が生じてくる。

春希に深く入れ込みすぎたせいで、小春は段々と、春希に惹かれていることに気付くのだ。

もし、小春が春希への気持ちを「恋」と定義してしまったら、雪菜とのキューピット役が瓦解するだけでは済まない。春希に振られた親友を、一番酷い形で抜け駆けした、ということになる。

WHITE ALBUM2 感想 小春

「好きだからこそ、告白しては駄目だ」

そんな二律背反の感情は、どのルートでも関わってくる問題なのだ。

恋愛感情に気づきつつも、思いを伝えるのを先延ばしにするというのはメタ的視点でみればよく取られる手法である。

小説など一本道の物語が続いてく上で、メインヒロイン・サブヒロインとの関係がこじれないための措置、と考えれば、自然な流れだ。

けれど、『WHITE ALBUM2』においては、最大限に駆使し、話がどんどん複雑化していく。やがて物語を大きく左右するレベルにまで大きくなっていくのが、一つの特徴とも言える。

そんな、純愛の路線を進もうとするほど、むしろ泥沼に嵌っていくのが、逆に物語から目を離せない要因になっているのだ。

恋愛を優先する、優しい世界との決別。その責任

最後、③について。

人物紹介で話したように、物語の途中で、春希と雪菜は恋人関係となっており、それが懊悩の前提条件として常に付きまとう。

雪菜は人気者で、家族、友達とも、温かな関係を築いている。雪菜と春希が気まずい空気になっていれば、武也がどこかドライブに誘ってくれたり、話し合いの場を設けてくれたりする程に。

だから、雪菜を振る、ということは、間接的にその人たちをも傷つけることを意味している。

春希は生真面目な人間で、十分にそれを理解しているからこそ、刹那的感情で簡単に結論を急いだりはしない。

共に歩んでくれた、優しくしてくれた人たちの信頼を裏切り、別の道へ進む。

『WHITE ALBUM2』は、その別れの儀式を丁寧に行なっていく物語だ。

恋を応援してくれた友人に、別れ話をした旨の報告をする
非難を承知で、彼女の家族に謝罪をする。

当然、冷たい態度が待っているし、心ない言葉も浴びせられる。

優しい世界が反転し、積み上げてきた全てが崩れ落ちていく。

けれど、そんな避けられない痛みを全て受け止めた先に、ヒロインと共に生きる未来が待っているのだ。

WHITE ALBUM2 感想 雪菜

じゃあ、雪菜ルートを選んだ場合どうなるの?

ここまで、雪菜ルート以外について述べてきた。

最初に告白され、恋人となった雪菜。
家族からも、友達からも愛されている彼女。そんな優しさに、春希も恋愛感情を抱いている。
なら、春希も好きなのなら、素直に雪菜と共に生きる道が自然か、言われると、少し違う。

「introductory chapter」で触れることになるが、春希は、雪菜と同じくらい、かずさへ強い恋心を抱いている。

雪菜は、春希とかずさの間にある思いの強さに、告白をする前から気付いていた。

出し抜くように、かずさより先に告白しまった後ろめたさ。
付き合っている最中でも、どこかかずさの影を追っている春希。
いずれ、かずさの方へ想いが傾くのではないか、という不安。

だから、雪菜と本当に結ばれるためには、彼女の抱えるわがたまりを解いて、ようやく関係が前に進めるのだ。

そんな、一番身近で、一番遠いゴールだからか、雪菜ルートはグランドエンドに近い立ち位置になっている。

春希が誰と結ばれるであれ、それぞれのルートの結末は、一つの幸せの形だ。

だが、ハッピーエンドとは限らない。痛み分けのような幕引きもある。

それは、誰もが悩み、苦しみ、最善を尽くした果ての、「最悪の中の最善」の結末なのだ。

そんな、優しくも残酷な物語を、柔らかく、温かく、冷たく、丁寧に描ききったのが、この作品の凄いところだと言える。

WHITE ALBUM2 感想 雪菜

まとめ

以上、『WHITE ALBUM2』の特色について語ってきた。

ここまで語ってきたポイントで、「浮気」の一言で済ませられない、色んな思いが入り組んで生まれた物語ということが伝わっただろうか。

では、なぜこの作品が冴えカノファンにも読んで貰いたいのか?
それは、冴えカノアニメ2期のサークルのように、「ずっと続くと思っていた関係が崩壊する」という部分にピントを当て、より深く切り込んできた作品だからだ。

どうしても敬遠されがちだが、だからこそ、直視したくない心情と向き合い続けた物語は、長く語り継がれるほど、心に強く残る。

ネタバレを覚悟で読んでくれた人も、冴えカノ2期終盤が好きな人も、これに機にプレイしてくれたら幸いだ。

スポンサーリンク